テイクオフのときに波に置いて行かれるし、パーリングするし、もうだめ・・・
波に押される原理をよ~くわかってっど、どうすんなんねってのがわかっぺ~
ということで、今回はサーフボードが波に押される原理を物理的に解説し、波に置いて行かれないようにするにはどうテイクオフすればよいのか。
パーリングをしないためにはどうすればよいのかなどについてお話していきます。
波の力の向きを知る
サーフィンをする波の力の向きは図のように下から上に向かっています。
海底が浅くなるにつれ波が高くなり、力の均衡が崩れると波の頂上が岸側へ崩れ落ちます。
ここで重要なのは波の力の向きがざっくり下から上に円を描くように運動しているということ。
水深が深いところ(サーフィンができないところ)では
このように円を描くように運動しており、波の進行方向への移動はほとんどありません。
波の形のみが伝わって、波のエネルギーのみが移動しています。
一方、水深が浅く、波の高さが大きいところ(サーフィンができるところ)では
Kraaiennest – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3374585による
このように楕円運動をしています。
このとき楕円運動が1週しても同じところへは戻らず、徐々に波の進行方向へ移動します。これを質量輸送といいます。
そもそもなぜ波ができるのかについては
サーフボードに加わる力とは
サーフボードに加わる前に進む力:推力を調べているうちに、一つの論文に出会いました。その論文の中で推力についてこう述べられています。
イルカや鯨のような水兵へおひれを持つ水中動物は,平水中を遊泳するとき,おひれを上下動することにより推力を得ていることは良く知られている。見方をかえると,おひれを上下に動かす代わりに,周囲の水が波により上下動しても推力が発生するはずである。
一色 浩, 八田 和也, 寺尾 裕, 波力利用振動翼推進の研究開発, 日本造船学会誌, 1989, 719 巻, p. 280-288, 公開日 2018/04/05, Online ISSN 2433-1007, Print ISSN 0386-1597
これをサーフィンに当てはめてます。
先ほど解説したようにサーフィンができる環境の波の動きというのは、徐々に波の進行方向へ進みながら、楕円運動をしています。
具体的にテイクオフの場面で考えると、波がきてボトムからすーっとトップへ上昇する水流が発生します。
つまり、サーフボードのボトムに水の流れが発生することにより、サーフボードに推力が発生します。
波により楕円運動をする水面を局所的に見ると、波の面に沿って斜め上に上昇していきます。
その水流がサーフボードにぶつかるとその点から垂直方向に揚力が生じます。
揚力をベクトル分解すると、水平方向に推力、垂直方向に浮力となり、この浮力を重力(体重)で、バランスよく抑え込むこと=打ち消しあうこと、によってサーフボードが前に進みます。
バランスよくというのは、ノーズとテールのバランスのことで、この浮力を抑え込まないとうまくボードが進みません。
浮力を抑え込めないと、テールがまくられ、パーリングとなります。かといって、体重をテールにかけすぎると、ノーズが水平よりも上向きになり、推進力が減少→波に置いて行かれます。
ノーズが少し下がるくらい~水平までのバランスになるように体重を調整しましょう。
また、サーフボードが進むときに造波抵抗・粘性圧力抵抗・粘性摩擦抵抗という大きく分けて3つの抵抗成分が生まれます。
それぞれはまたの機会にご紹介するとして、浮力があるボードは、この3つのうち粘性摩擦抵抗が少なく済みます。
粘性摩擦抵抗はボードと水がこすれることで発生する摩擦による抵抗のことで、水中のボードの表面積に比例して大きくなります。
つまり、浮力があると水中のボードの表面積が小さくなるので抵抗が少なく、より推力を得られるということになります。
また、抵抗が少ない分、スピードが出やすく、ボトムの水流速度が大きくなればなるほど揚力が増加するので推力が増加することになります。
浮力があるボードのほうがより推力が生まれやすいんだべ
ノーズが下がりすぎるとどうなるか
パドリングをして、波が来るとテールがすーっと持ち上がります。
これは前述したとおり、水面が進行方向に進みながら楕円運動をしているために生じます。
このとき
・テールが持ち上げっているのに胸を反らず、頭が低いまま
・足が開いてテールに体重がのっていない
と、そのまま波と同じように楕円運動、つまり、パーリングしてしまいます。
ノーズが下がりすぎていると揚力が減少、つまり、前への推力が得にくくなります。この斜めのボードの上でバランスを崩さずパドリングの状態から立ち上がることはなかなか難しいものです。
波の傾斜がきつい、掘れている波は特にノーズが下がりすぎの状態になりやすいので
- 胸を反って重心を後ろに持ってくる
- 立ち上がるのにかかる時間を短くする
- いつもより少しだけテール寄りでテイクオフする
- もう少し沖から or ピークをずらしたところからテイクオフする
といったあたりが掘れている波に合わせた対策です。
あくまでノーズの下がりすぎに対してです。
流体力学の言葉に迎え角という言葉がありますが、流れに対してボードがどれだけ傾いているかというです。この迎え角があることで揚力が発生しているのですが、あればあるだけ良いというこでなく、ある角度を超えると流れの剥離により揚力が減少、圧力抵抗が増加となってテイクオフにはマイナスです。
このへんについては気が向いたらまた後日解説します。
しかし、波に合わせた対策以前に、そもそも基本的なことが抜けているがゆえにパーリングしている場合もあると思います。
すべては波のせいなのか、自問自答してみましょう。
- 足が開いていないか
- 手の付く位置がノーズ寄りすぎないか
- 下を向くことで頭が下がっていないか
ノーズが浮くとどうなるか
上記で解説したように水流と垂直方向に揚力が発生します。
ノーズが浮いた状態では揚力の向きが上向き近づき、前への推力が小さくなってしまいます。
推力が小さくなるだけでなく、水に沈む表面積も多くなるので粘性摩擦抵抗や、楕円運動する水流からの形状抵抗など、前へと進む力に抵抗する力をより強く受けることで波に置いて行かれてしまいます。
あっという間に波のトップまで持ち上げられ、気づいた時には波の向こう側というか沖側へ移動していて、こうなってはテイクオフは不可能です。
ノーズは水平よりも上には浮かないように対策しましょう。
波の傾斜が緩やかで、厚い波のときにノーズが浮きやすくなるので
- 胸を反らしすぎず、ノーズを抑え込む
- テイクオフのとき手でノーズを抑え込む
- パドリングの速度を速くする
- いつもよりも少しだけノーズ寄りでテイクオフをする
このあたりでしょうか。
逆に前乗りしてしまいそうなときや、優先権のある人がいた場合はノーズを上げることにで波に乗らないという方法をとることができます。
まとめ
この記事ではボードが波に押される原理を簡単に解説しました。以下に押さえておくポイントをまとめます。
- サーフィンに適した波は、徐々に波の進行方向へ移動しながら楕円運動をしている。
- ボードの角度をノーズがわずかに下がる~水平を維持することで波から推力を得られ、テイクオフしやすくなる。
- 波の優先権問題でテイクオフしたくないときはノーズを上げることで波から受ける抵抗力をより強くし、推力を抑える。
ボードには立つには立てるんだけど、「波に置いていかれる」「前につんのめってしまう」という方は立つ位置=足の位置が毎回定まっていないことが原因のひとつかもしれません。
そのような方にはフロントデッキパッドの使用をおすすめします。
こちらの記事からどうぞ。